みなさんは漢字の書き順の指導をどれくらい力を入れていますでしょうか。
自作漢字テストなどに筆順の問題を出して評価するものとして扱っていますか?実際私も以前は筆順を大事にし、テストなどもして徹底しようとしていました。
そんな筆順に厳しかった私ですが、あるとき
「書き順の指導って必要なの?」と疑問を抱きました。
ということで、書き順の必要性などについて私なりに調べたことを解説いたします。
結論から言うと・・・
書き順の指導は小学校低学年は必要であるが、中学年以降の必要性は明言はされていない!
学習指導要領における書き順の扱い
小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説の国語編を見ていきましょう。
指導要領では書き順という言葉ではなく、「筆順」という言葉で登場します。
始めは「筆順とは?」という定義からしっかり説明してくれます。
筆順とは,文字を書き進める際の合理的な順序が習慣化したもののことである。
学校教育で指導する筆順は,「上から下へ」,「左から右へ」,「横から縦へ」といった原則として一般に通用している常識的なものである。
小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説「国語編」平成29年7月 より
内容としてですが
第2節 国語科の内容 第1学年及び第2学年、内容(知識及び技能)、⑶我が国の言語文化に関する事項 には次のようにでています。
ウ 書写に関する次の事項を理解し使うこと。
(ア) 姿勢や筆記具の持ち方を正しくして書くこと。
(イ) 点画の書き方や文字の形に注意しながら,筆順に従って丁寧に書くこと。
(ウ) 点画相互の接し方や交わり方,長短や方向などに注意して,文字を正しく書くこと。
小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説「国語編」平成29年7月 より
漢字の習い始めである低学年には筆順の指導は必要であることがうかがえます。
ただし筆順の習得や暗記が目的ではなさそうです。というのも次のような記述があるからです。
○書写
書写に関する事項である。
ここに示す内容を理解し使うことを通して,各教科等の学習活動や日常生活に生かすことのできる書写の能力を育成することが重要となる。
文字のまとまった学習は,小学校入学を期に始まる。文字を書く基礎となる「姿勢」,「筆記具の持ち方」,「点画や一文字の書き方」,「筆順」などの事項から,「文字の集まりの書き方」に関する事項へと,内容を系統的に示している。さらに,文字や文字の集まりの書き方を基礎として,筆記具を選択し効果的に使用するなど,目的や状況に応じて書き方を判断して書くことについて示している。
小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説「国語編」平成29年7月 より
上の記述を読むと、筆順などの内容を理解し使うことは、各教科等の学習活動や日常生活に生かすことのできる書写の能力を育成することが重要とあるので、あくまでも筆順は書写の能力を育成することの1つの要素であるのだと考えられます。
さらに次の引用をご覧下さい。
点画の始筆から送筆,さらに,終筆(とめ,はね,はらい)までを確実に書き,筆順に従って点画を積み重ねながら文字の形を形成していく過程を意識して書くことが大切である。そのように意識して書くことが読みやすい文字を丁寧に書こうとする態度を身に付けることにつながる。
小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説「国語編」平成29年7月 より
ここでの記述では「意識して書くことが読みやすい文字を丁寧に書こうとする態度を身に付けることにつながる」とありますので、筆順は目的でなく、それを意識した先にある「読みやすい文字を丁寧に書こうとする態度を身に付けること」につなげるためであることが伺えます。
これらのことから、筆順の指導は低学年は指導の必要性がありそうですが、その目的は習得や暗記ではないことがわかります。
ちなみに、中学年・高学年の内容に「筆順」という言葉は登場しません。
では中学年・高学年で指導しなくても良いかと言われると、明言こそされていませんが、筆順を通した目的があれば指導して損はないかと思います。ただ、習得・暗記を目的にするのはしないほうがよいでしょう。
文部省「筆順指導の手引き」より
筆順について考える上で、
1958年に文部科学省の前身である文部省(当時)から出された「筆順指導の手びき」に興味深い記述があります。こちらはネット検索でも出てきますので、気になる人はぜひご覧ください。
そこには次のように記されています。
本書に示される筆順は、学習指導上に混乱を来たさないようにとの配慮から定められたものであって、そのことは、ここに取りあげなかった筆順についても、これを誤りとするものでもなく、また否定しようとするものでもない。
文部省「筆順指導の手びき」 「1.本書のねらい」より
これを見ると、筆順は定めてはあるものの、それ以外の筆順についても間違いではないとあります。
今から60年前の文章ですので、現在もこれが変わらず適応されてるのかは不明ですが、文部科学省の前身たる文部省がこのように明言していることが興味深いです。
しかし、なぜ文部省がこのような「書順指導の手びき」というものを作ったのかも気になります。
そこも読んでいくとばっちり書いてありました。
漢字の筆順の現状についてみると、書家の間に行われているものについても、通俗的に一般社会に行われているものについても、同一文字に2種あるいは3種の筆順が行われている。特に楷書体の筆順について問題が多い。このような現状から見て、学校教育における漢字指導の能率を高め、児童生徒が混乱なく漢字を習得するために便ならしめるために、教育漢字についての筆順を、できるだけ統一する目的を以て本書を作成した。
文部省「筆順指導の手びき」「1.本書のねらい」より
さらに筆順の指導の大切さを次のような引用からも伺えます。
筆順は、全体の字形が、じゅんぶんに整った形で実現でき、しかもそれぞれの文字の同一構成部分は、一定の順序によって書かれるように整理されていることが、学習指導上効果的であり、能率的でもある。このことは、漢字ばかりでなく、かな、ローマ字等についても、同じことが言える。
文部省「筆順指導の手びき」「1.本書のねらい」より
このように学習指導において効果的で能率的であるために筆順は整理され、今に至っているわけなのです。
まとめ
ここまで見てくると筆順指導においても様々な歴史があり、今日にたどり着いているのがわかります。
それらを「学習指導要領にないから!」という理由で無下にしてしまうのはもったいない気もします。
「書き順の指導の必要性はあるか」という問いに対して、
必要か、不必要かという判断はできませんが、そこまで筆順はきつきつに指導せずとも良いと思います。しかし子どもたちに教える立場として、筆順はなぜあるのか、筆順を通して何を学んで欲しいのかなどを整理して引き出しとしてもっておくと良いのではないでしょうか。
取り留めのないまとめで失礼いたしました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
コメント
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